「鳥が歌う」のジャケットは、もしかすると私が幼い頃から最も見慣れた絵で、それは私の母が小学5年生のときに教室で描いた油絵で、母の実家(私から見た「おばあちゃんち」)にあたる家のリビングに、母の両親が亡くなってその家を畳んだときに母が引き取るまで、ずっと飾られていた絵でした。
私は毎年夏にあの家に帰って、あの絵の下で猫と遊び、おじいちゃんとファミコンをし、皆に構ってもらっていた。


母は画家ではありませんし、私が産まれてからはずっと専業主婦でした。
私は自分がはじめてのCDを作るとなったときに、母のこの絵を使う以外思いつかなくて、CDのタイトルも実家に帰ったときに絵を見て決めた。その後使わせてほしいと連絡し、あの絵は母の車で七針に運び込んで店主に写真を撮ってもらったりしたのですが、母は総じてとてもうれしそうだった。
特に親孝行とかのつもりではなかったけれど、今思えばだけど、自分の中にうっすら溜まっていた気持ちが、少し鎮まったのは確か。


母に対して、絵を、描きたいんじゃないのかなあって思うことが何度もあったし、正直今も思う。母が油絵の具や、額縁を買っていたことがあるのを知っている。
子供として、母には、母じゃない顔があってほしかった(存命なので、過去形はおかしいか)。たとえば、たくさん絵を描いて、個展なんて開いていたらなんて素敵だろうか、と思う。やってほしいというわけじゃなくて、もしも本人の意思で、そういうことをしていたら素敵。


私はそう思う。
忘れそうになるから、書いておきます。